1980年(昭和55年)春、彫刻を始めて45年目に入りました。30年余り人体をメインに制作してきましたが、15年くらい前から人のかたちをしていなくてもいいんじないか、人が立つ、座る、臥す、そのフォルムの中にある強くて重要なエッセンスを表現していこうと思うようになり、シンプルな作品を作り始めました。その後、2018年樹齢六百年ひのき、2021年樹齢千年さわらに出会い、雷が落ち天辺から裂けて、風雨にさらされ朽ちていくのに抵抗して立ち続けていた姿に心を動かされました。そして、木に降りそそぐ太陽・月・雨・雪・風、さらに、動物・鳥・虫・蟻・微生物にいたるすべての痕跡を取り込んでいこうと思いました。今回の作品たちは、木をとりまくすべての事象と私のコラボレーションです。
幼少の頃から山に連れられていき、さまざまな木に囲まれて今日まできました。彫刻を始めて40年を過ぎて出会った樹齢千年の木に、どこまで切り込んでいけるのか、臆することなく立ち向かっていきました。
(2024年 秋 彫刻家 吉岡 淳夫)