今月のフォーラムは松尾芭蕉の最終回。

「挙句で結ぶ『おくの細道』なをかけ廻る夢心ー芭蕉晩年力」と題して
講師は芭蕉研究家の江口博氏。

月日は百代の過客にして行きかふ年も又旅人なりで始まる「奥の細道」は
大垣が挙句として日々旅にして旅を栖とする芭蕉の、人生の結びである。

芭蕉の文章と書簡を芯にしての最終回。

大垣で書き残した「紙衾の記」は「奥の細道」のもととなる作品である。

この旅を振り返り最初に書かれたもので毎日使った紙衾に対する尽きぬ愛情があった。

紙衾とは旅の寝袋で大垣に着き、体調を崩した芭蕉を介護した竹古の求めに応じ
「紙衾の記」を添えて与えた。

不易流行の世を旅しながら得た「かるみ」への志向。
これは高く悟り俗にかえるという事であったが芭蕉の心からは遠く離れて、
俗にかえることが独り歩きをした感がある。

芭蕉51歳の時、江戸から上方へ最後の旅で 旅に病んで夢は枯野をかけ廻る
を残し美しい花野をとぼとぼと歩き彼岸へ去った。

講義を受けるほどに、芭蕉の偉大さが身に沁みた。